決別と出発

またしても日本代表です。
今回は、解釈ではなく印象を一気に書き綴ります。このままでは、この集団はいけないとかなり強い危機感を覚えましたので。


結果オーライの引き分け、殊勲の引き分けという感じになっていますが、個人的な印象は随分異なります。
前回、この集団が基本、二つの異なるビジョンを持った集団が合わさった形という解釈を書きましたが、多分その解釈で間違いないな、それが現監督の明確な意図だなと感じた今回の試合です。かつ、今のままでは、集団が行き詰まる、もしくは勢いが失速してしまうと危機感を覚える試合でした。


前回と同じく、新集団で1点、旧集団で1点、合計2点と2失点の引き分けと思っていますが、旧集団での本田選手による1点というほうは、想定内のこと。彼は「そういう」活躍の仕方をする選手だと思います。これはこれで納得なのですが、よろしくないのは、「新集団で1点+2失点」というほうです。


個人的には今日の試合は、3対1で勝利(新)か、1対2で負け(旧)の試合が、新旧を融合させた形にこだわっているが故に、2対2の引き分けになった試合だと考えています。前回の試合の時には、この奇妙な内部分裂を内包した集団はどうなっていくのかしらね? やはり日本選手の集団には、日本的な曖昧なまとまり方があっているのかしらね、などとのんびり考えていましたが、やはり、こういう大会で、こんな曖昧な妥協を含んだ結束ではいけないのだと、心から思う試合になってしまいました。


やっていた選手たちも、少なからずそう感じていたように見受けられましたが、この集団が今、次試合に向けて真剣に考えるべきことは、なぜ「新集団の戦い方をしていた時に1点しか取れなかったのか」ということだと思います。そして認識すべきは「結局2失点している」という事実です。そこの原因を突き詰め、よくよく考えて、現監督に選手の起用をもう一度考えさせるべきと強く思っています。特に、現監督が選手たちの意見を「本当に」聞き入れる人なのであれば。


個人的には、これも前回解釈したことと同じなのですが、中盤の守りの要を長谷部選手にしては伸びしろはないのだと思っています。「いや、彼は効果的で頑張っていたし、守備もまとまっていた」と玄人の人々には見えるのかもしれませんが、素人が、集団のあり方の観点から見ていますと、彼のやりやすい方法に周囲が合わせたから彼が効果的に活躍できるのであって、その分、周囲の負担が増えている、のだと思います(香川選手や昌子選手)。


今のような戦い方の基盤を作ったパラグアイ戦では、確かに2失点しましたが、4得点しています。本来、この戦い方を、失点を抑える方向に磨き上げるべきところ、そもそも、この戦いで行っていた、山口・柴崎両選手の超攻撃的守備を捨てて、長谷部選手の堅実守備を組み込んでいるところに、新集団の行き詰まりの原因があると思っています。うまく言えませんが、守備が間延びして数テンポ遅いので、攻撃に移った最後の最後で、数歩分、攻撃陣に余裕がないのです。おそらく本当にほんの数歩分なのですが、おそらく非常に大きな違い。それが、決定的な場面に決めきれない主な原因と思います。あのドイツチームだって、入らない時はゴールは入らないのですから、仕方がないものは仕方がないのですが、今の日本に限って言えば、うまくいっていない原因は明確にそこにあるように思います。単純にぶっつけで4得点できていたチームが、長谷部選手が入り、万端の準備をしての2試合では、各1得点しかできていないのです。


本田選手が、冗談か本気かこの試合前に「皆が自分が活躍する場をセットアップしてくれているので」と言っていたことを思い出しましたが、まさにそうなっています。彼が1点取ることができるようにするために、他が3点とれる方法を捨てているのが、今現在の集団の方向性です。他の選手たちは本当にそれでいいのでしょうか?


いや、パラグアイは親善試合だし相手は弱かったし、今はW杯本戦だし相手は強いし、という言葉が聞こえてきそうですが、それはあまり関係ありません。準備を整え長谷部選手のやりやすい守備方式にした結果、前試合は1失点、今試合も2失点と、結局無失点で抑えられているわけではないのですから。次のポーランド戦にこそ、今の集団が本当に目指すべきところが目指せるか、や、この集団の真の意味での成功への足がかりが掴めるか、がかかっていると思います。そして、そこに旧集団の面々が中核を担うものとして入っていてはいけないのです。というか、それをしては、芽を潰してしまうのです。


次戦までのこの3日間で、集団内の、新旧問題に良い意味でけりをつけるべきで、やはりそこを曖昧にしていてはいけないと思います。今、集団の雰囲気もいいし、まとまっているので、という試合後の誰かのコメントを聞きましたが、個人的にはそれは表層に過ぎないと思っています。そして、今回の試合は、またそれをきっちりと表面化させるいい機会だと思っています。


大迫選手が決定機を逃し、本田選手が「チームを救った」ことで、また集団内に微妙な空気感が芽生えると想像していますが、新集団の選手たちは「本田選手は、チームの一員として、彼自身の担うべき責任として、このセネガル戦を引き分けに持って行き、チームにとっての先への望みを繋いでくれた。これを無駄にしないぞ。以上」でいいのだと思います。個人的には、これで彼のこのW杯での役割は終わったのではないかと思っていますし、新集団の選手たちが、そう、きちんと終わらせなければいけません。さらに言えば、長谷部選手、おそらく川島選手、長友選手も同様です。それを行動で示し、この集団のもつポテンシャルを最大限に発揮する方向に導くことができるのは、新集団の面々だけです。おそらく現監督には、そういう判断はできないのでしょうから。いえ、もしかしたら、今ならできるのかもしれません。このままで行けば、負け、良くて一勝二分けで予選敗退だと肌で感じているかもしれないですし。


物事には色々なことが一気に変わる潮目というものがありますが、今、ここでこの流れを上手く良い方に流せさえすれば、新旧問題も、前監督との確執も、本田選手の欲と執念の落としどころも、さらなる結果も、全てがまるく収まり手に入るという正念場のような気がします。今こそ、このタイミングで、旧集団は後ろに引き、新集団の真の意味でのバックアッパーになるべきと思いますし、今しかないタイミングと思います。自分たちは若手の力を借りてここまで来て、その力を証明したのですから、ここから先は、自分たちの夢を託すために、若手にバトンを渡す時と思います。もし、現監督がそれに成功するなら、そこではじめて、彼の手腕は称賛に値するものになると、個人的には考えます。


ですから、次の試合は、新集団が思い切りやりたい形で、一番やりやすい方法で挑み、このW杯や、次世代のチームの足がかりをそこからリスタートさせて欲しいです。個人的には、先発から長谷部、長友、川島の3ベテラン選手を外し、パラグアイ戦同様、山口選手をキャプテンにしていいのではないかと考えています。乾、原口選手の位置を入れ替え、原口選手を主戦場に戻すのもいいと思っています。一旦、吉田選手を外し、植田選手でもいいとも思っています。勝っていないのですから(むしろ今日は負けに等しい)、チームをいじるなの定石はあてはまりません。そして、香川選手はそういう中でこそ、より力強く集団を引っ張って行ってくれると、今日の試合で確信しています。結局のところ、真の結束と献身が彼を強くするのであって、生ぬるい妥協の中で犠牲になってはいけないということです。原口選手、大迫選手、柴崎選手も同様です。


旧集団勢は、今の彼らに出来る最善の形を追い求め成果を収めました。問題は、そのままではこれ以上の伸び代は見込めないということです。そして、彼ら自身がそれを悟れる最善のタイミングだと思うのです。


今度は新集団の選手たちが貪欲に自分たちの最善の形を求める番です。


個人的には、前回の試合結果があまりに嬉しくて「集団内で互いに牽制しあう中、新集団の中で守り守られている」という生ぬるく甘っちょろい解釈をしてしまっていたことを反省。やはり、個々が本当の意味で持てる力を最大限にを出し切り、それぞれが、それぞれ結果を出し集団内での立ち位置を勝ち取らなければ。その上での結束です。うまく言えませんが、新集団は「妥協」を結束の拠り所にしてきたのだと思います。故に、コロンビア戦での修正点を間違った方向に(無難に下方)修正してしまい、その結果がセネガル戦の引き分けと思っています。今、その拠り所が崩れましたから、新集団が分裂しかねない状況のようにも思えます。


ですから、今度こそは、負け試合を引き分けに持って行ってくれた、という旧集団方向に納得しては絶対にならず、勝ち試合を勝ちきれなかったという方向で正しく集団を修正していくべきだと思っています。一回ぐらいは、W杯で、頭から最後まで「新集団らしい」戦いが見たいですし、自分たち自身のためにも見せなければ。旧集団は新集団の足を引っ張るのではなく、後押しをしなければ。そのためには、今引くことです。


次が、この集団にとって、泣いても笑っても本当の本番なのだと思います。現監督にどれだけの覚悟と戦術眼と見極めの力があるのかわかりませんが、少なくとも選手たちに声をあげることが許されているなら、次戦へ向けての論点は、ただ一点、長谷部選手がやりやすい守備の仕方では、攻撃がうまく生きにくい、で、そこを強く訴え改善する(=山口選手に変える)ことだと思うのです。相手が敗退の決まったポーランドである等は関係ありません。妥協をしては、後悔するだけです。



Players




追記:

ポーランド戦で、川島選手先発か?という記事を見かけましたが、個人的には、長谷部選手を外すのであれば、それで賛成です。それに、思い切って左に原口・酒井豪徳選手、右に乾・酒井宏樹選手とか……。真ん中に香川選手、その後ろに柴崎・山口両選手。ここまできたら、後ろは思い切って植田・昌子両選手のほうがうまく行く気もします。で、岡崎選手先発、切り札に大迫選手、疲れてきたところで前の右に宇佐美選手か武藤選手、もしくは大島選手。次の試合に限っては、終盤勝っていても同点でも負けていても最後まで守りに行く必要はなし。守備重視、攻撃重視、ではなくて、常に守りながら常に攻撃。まあ、あくまでサッカーではなくて、集団の関係性から考えて、ですけれど。香川選手も任せるところは任せ、まずは自分が得点、周りを生かすのはその後で、くらい気持ちのほうがうまく行く気もいたします。影の黒子よりも表の魔法使いでいた方が多分色々合っています。