神頼み

さて、相変わらずサッカー代表。今晩、もうベルギー戦なのでしたっけ。
今回もサッカーというより集団の話です。


ポーランド戦は、かなりがっかりした試合で、個人的にはこれまでの解釈の基本構造は、悪い方向に遠からず合っていたのではと思わされた試合でした。個人的には、後半最後のパス回しなどどうでもよくて(と言うよりも、あの状況ではむしろ止むを得ないことで)、がっかりさせられたのは先発。選ばれた選手個々の質や出来が云々というよりも、そもそも一つの集団として目的に沿って成り立っている構成のように見えなかったことに、がっかりを通り越して力が抜けました。


「博打に打って出た布陣」や「選手が期待に答えられなかった」というような言葉を見かけましたが、どちらかというと、この試合に関して言えば機能しなかったのはほぼ100パーセント監督の責任で、なぜ集団がうまくいっている・いないのか、誰が集団の核で、誰が集団をどう機能させているのかを正確に、現実的に理解していないからこそ出来たことと解釈しています。そのツケを払わされ、(一般のイメージとして)責任を押し付けられた6選手たちがさすがに気の毒。


個人的に、香川選手と長谷部選手の併用には懐疑的ですが、どちらも出さないというオプションは論外でした。集団が集団として成り立つために、派手に目だとうが目立つまいが核となる数選手というものがありますが、現集団において、柴崎・酒井宏樹選手が核の一端を担っているとして、攻めに行くなら香川選手、守りに行くなら長谷部選手は決して外してはいけない核だと思っています。ここを併用することで、バランスは取れるものの、可能性の高い攻撃の方に行き詰まり感が出ているのなら、思い切って長谷部選手を外し、攻めに集団の比重を移すほうが良いのではと、個人的には思っていたのですよね。が、まさかどちらも外れるとは。ので、結果は必然だったと思います。


気になるのは、なぜそういう愚策に走ったか、というところ。で、現監督はもっと冷静な人で策士なのかと思いかけましたが、どちらかというと、選手を見極めて起用しているというよりは、選手任せ・運任せということが、たまたまうまく行く人なのだろうという解釈に落ち着いています。前2試合がうまく行き過ぎて「自分の力」を過信したかもしれません。


かつ、やはり監督をはじめとして、集団は、セネガル戦の後、本田選手の言葉の力に惑わされてしまったのかなあと思っています。集団の雰囲気を見ていても、本田選手が得点を決めたことを、選手たちがどう解釈すればいいのかわからないまま、結局「戦術本田」集団に逆戻りしている気がしますので。


ただ、同選手の妄想は「現実」の前には無力で、かつ、彼の妄想力は、彼だけに有効な力ですから、他の人には単なる悪影響になる可能性のほうが高いのですよね。それを前監督は見抜いていたと思っています。なぜ、本田選手を選ばなかったのか、という質問を前監督下のコーチが受けているような記事をちらと見ましたが、今なら「最終的にこうなるから」と言えるのではないでしょうか。



個人的には、やはり本田選手という人は意思の力で得点をしているのであって、しかもそれは決してチームのためにならない、と今でも思っています。彼が、人類の幸せや、サッカー観や、戦術や、自分のプランを語る時、その言葉に実を感じられることが個人的にはほとんどないのですが、唯一、これは自分が感覚で知っていることを話している、と実を感じる言葉は、ワールドカップや大きな舞台に挑む時の精神の持っていき方、整え方の話をしている時です。自身でも妄想と言っていましたが、そこから思い込み〜トランス的な精神状態になることのコツを知っているのだと思います。アメリカのオリンピック選手なども、こういうことに長けているので勝てるのだろうなと思っていますから、重要な力ではあるのですけれど。


……本田選手はなぜ、射撃やトライアスロン、もし世界的に有名になることが重要ならテニス、せめて野球の選手にならなかったのでしょうね。こういう人物が、サッカーという競技を、自らのキャリアとして選んでしまったことが、日本のサッカーにとっては不運だったのかなあと思っています。せめて、野球でピッチャーですとか。自身一人の力で大リーグで活躍できたのでしょうし、努力でいくらでもそれなりの投手になって、意思の力でどれだけでも勝ち続けられて、名声もお金も手に入り、一番合っていたのではないのでしょうか。まあ、それこそ妄想ですけれど(苦笑)。



話題戻しまして、本田選手の思い込みの力を全否定するわけではないのですが、彼はアンバランスなほど現実の正しい認識能力に欠けていて、そこが結局は集団競技においては集団の勝利に繋がらないということを言いたいのですね。彼の活躍は、彼自身の力ではなくて、周囲の積み上げの上に成り立っているものと思うのです。南アフリカしかり、今回もしかりです。他の選手たちが、集団が(彼無しでも)十分に活躍できる下地を作った上に、点をとる目的だけで彼がポンと入った場合にだけ、うまくいくのですね。で、彼自身がそこを理解していさえすれば、彼は強力な武器になると思っています。ですが、問題は彼自身が、その「下地」部分を含めて全て自分の功績と思い込むことができ、かつ周囲にもそうと思わせてしまうところです。かつ、勘違いしたまま、集団を自分の思う方向に操ろうとするところです。ですが、それをしてしまっては、集団が向かう先は「1部を目指す2部リーグのチーム」になってしまうのですね。これがブラジル。


今回もそうであるように見えています。彼が中心となったガーナ戦、スイス戦では集団が機能せず、博打的に先発を変更した布陣のパラグアイ戦で「他の選手たちの試みが功を奏し」集団が機能し始めました。彼の集団内での発言力は低下し、パラグアイ戦の戦力・戦い方を中心にコロンビア戦に挑み勝利(本田選手もポンと出て勝利に貢献)、そのまま次戦セネガル戦で好戦(本田選手もポンと出て引き分けに持ち込む)、以降、「結果を出した」本田選手の集団内での発言力が増し、集団が行き着いた先がポーランド戦。先発6人入れ替えの判断に本田選手の発言が少なからず影響したと思っていますし、もしかすると監督自身の判断は、本田選手をその先発に加えないとしたことだったのかもしれません。むしろ、あそこまで現実を無視した先発にするなら、本田選手を入れたほうが、集団にとっては良かったのでは、と個人的には思いますけれど。



ちなみに、岡崎選手が、本田選手が得点できる理由を「球はやっぱりそっちに転がってしまうんだな、その時その場所にいるということができるんだな」というようなコメントをしたのを見かけましたが、思い込みの力というものの正体は、そういう神がかり的なものではないと思っています。


彼が意思の力で得点できる構造をごく独断的に解釈しますと、単純に普通のサッカー選手は考えないような思考回路で、周囲を見ているから、だと思うのですね。例えば、敵ではなく味方の選手をマークしていて、そこにチャンスが訪れたところで、そのスペースにスッと入ってチャンスを奪い得点、もしくは、自分のポジションと義務を放棄し得点を出来そうなところに陣取り得点、といった感じ。それで点が取れるならいいじゃん、助かるじゃん、となりそうですが、所詮「普通のサッカー選手は考えないような勝手な思考回路」で動いているわけですから、周囲の選手に与える負担が大きくなる、と。故に、彼が得点できても、チームが勝つことができないのだと思います。それを「彼は持ってる」と勘違いして、一目置いてしまうと、色々奇妙なこと(集団がバラバラ)になってしまいます。


ちなみに、個人的には、この集団の面白い(?)ところは、相手チームではなく実は集団内で色々な意味で主導権を争っているように見えるところ。集団の強さを直接左右する類の主導権で言えば、セネガル戦で少なからず本田選手にそれが移ってしまった理由は、やはり香川選手にあると考えています。具体的には、柴崎選手が前に出したボールに、酒井選手が追いつき折り返して、大迫選手がそれをフリーの香川選手に繋いだところがターニングポイント。


なぜフリーなのにこねくり回した? という意味ではなく、そこでの彼と周囲の認識に差があったと思うからですね。あのまま香川選手がシュートまで持ち込んだとして成功の確率はおそらく良くて半々。実際には4ー6で不成功のほうが高かったかもしれません。で、咄嗟にそれを判断して右サイドにスペースを空けるという意図に切り替えたのだと思います。実際、香川選手は右を確認していますし、ボールを「こねくり回している」間に、敵のディフェンスが全員引き寄せられて、大迫選手とゴールまでのシュートコースが完全に空いていましたし、かつフリーの酒井選手もいました。それでシュートが決まる確率は、(所属チームでは)80パーセント。で、香川選手はこちらにかけたのではと思います。


が、周囲は、香川選手が50パーセントの勝率で勝負し決めてくれることを待っていたと思います。香川選手はあの瞬間、全選手からそれを託されたわけで、個人的にはここは無理してでも、例え10パーセントの確率しかなくても、自分で決める方向でこの攻撃を終わらせるべきで、でなければ、意図を明確に他の選手に叫び伝えるべきだった気がします。あの場面、明らかに他の選手たちは見守っていましたし、大迫選手はボールを渡されて戸惑っていたように見えましたし。


個人的には香川選手一人の力でセネガル戦に勝てる可能性があったとするとそこだけで、かつ彼はそのワンチャンスを、例え次により高い成功の確率を生み出していたとしても、自分を犠牲にし、他に託す方向に使ってしまった、と。この集団における自分に対する信頼の質をきちんと理解していなかったのかもしれません。……と、部外者の素人が言うのは簡単ですけれど(苦笑)、そして本人は分かっていそうですけれど。ただ、次にチャンスが来たときには決めてくれるはずです。実際、過去にそうして来ている人ですので。問題は次のチャンスがあるのかどうか、です。


と、過去のことを今更書くのも、今日のベルギー戦に話を繋げるためです。


で、上記解釈から、今日の試合はなんとも言えず運頼みになるな、という結論なのですね。今大会は、番狂わせが多いなどと言われますが、決勝リーグに関しては、単純に予選の調子が良かったチームが勝っています。3連勝のチームか2勝のチームが、です。負けた強豪チームは予選も快勝してはいなかったようですし、勝った番狂わせチームは予選も調子が良かったのですね。ので、本当の番狂わせは起こっていないと言うのが個人的な認識です。


と言う状況で、日本ベルギー戦です。ベルギーは、比較的楽なグループに入ったというのも目にしますが、その弱い相手に一切取りこぼしをしていません。ということは、油断という付け入る隙はほぼ無いと言って良い集団なのだと思います。


ので、単純に考えれば、1勝1敗1分けの、やっと予選を這い上がったチームが勝てる相手では無さそうです。
ですが、個人的独断的解釈によると、今の日本チームという集団は少々特異な形態をしていると思っています。この集団は、3連勝出来たかもしれない地力のチームと、3連敗したかもしれないチームが共存合併していることで1勝1敗1分けのチームになっていると思っています。


そして、現監督はそれを見極めているわけでは無い、と。ピッチ上に立つ選手を選ぶのは監督ですから、日本チームの善戦は、監督の博打がたまたま3連勝をしたかもしれない方の正しい布陣になるかどうか、という運にかかっていると思っています。当然、1勝1敗1分けのチームでいく可能性が一番高いですが、それでは当然勝ちは難しく、かつそう単純にはいかせない様々な思惑もあるように見えます。


で、監督判断が正しい方向に行く可能性は、現状から推測するとあまり高くは無さそうな気がします。あまりにも、3連敗をしたかもしれないチーム方向に全てが傾いて見えるのですね。個人的には、スイス戦前の集団の状態に近いのではないかと思っています。


不本意な勝ち抜けをしたことでチームに、選手コーチスタッフ一丸となって戦おうとする一体感はある、という記事を見かけますが、それが本当の意味で結果をだせるような一体感なのかには、個人的には疑問があります。今の状況では、少なくとも6選手の気持ちは複雑だと思いますので。
この「一体感」と言う言葉の先に、なんとなく見え隠れしてしまうのは、皆がそれぞれに「俺がやる」となり、空回りし、集団がピッチ上で崩壊しかねない危険性です。今、一番そういう方向に陥りそうに見えるのが乾選手でしょうか。


選手たちの言葉に少なからず余裕があり、勝ちに行くと言った自己暗示的なものが目立つのも気になるところです。集団が、冷静に足元を見て準備をするということと、盲目的な自己暗示で勝てるメンタリティになることの適度なバランスというのは、本当に繊細なコントロールの上に成り立つと思うのですが、本田選手の集団内での影響力が増していると思しき今、それが正しいバランスになっているとは考えにくい気がします。頭でっかちになり、実際の「体=事実」がないがしろにされているように見えるのですね。そもそも、勝てる、という思い込みと信頼に答えたいという熱い思いだけで集団が結果を出せるなら、3戦目も監督の思惑通りに勝っています。ちなみに、このあたりのコントロールが見事だったのが、たぶん前女子代表監督。


今の香川選手は、そういう空気感に惑わされず、しっかりと体の準備が出来ていそうで、かつ精神状態もよく、活躍する心構えもできていそうですが、今、この状況で彼に、集団に対してそれほど強い影響力があるかどうかは微妙なところです。3連勝したかもしれない方の集団側にいた、岡崎選手と原口選手が、3連敗側のメンタリティに流されかけている印象があるのも気になります。ただ、柴崎選手は、3戦目で少し目が覚め、エゴを抑え冷静になっているのではないかと期待しますし、大迫選手や酒井宏樹選手は、そもそも芯の部分ではあまり流されなさそうです。


と、全体的にあまり心躍る要素は見つけられないのですが、やはり「奇妙な勝ち抜けをした」結果「監督の存在が、どうであれ選手たちの中で変化した」という部分が未知の要素のような気もしますし、あまり確率は高くないものの、やはり一度は、3連勝したかもしれない集団を見てみたい気持ちは消えません。


それと、やはりサッカーの神様というものはいて欲しいですね。個人的には、それは一人ではなく、それぞれの集団ごとにいるような気もします。日本代表に関して言えば、色々なものが浮き彫りなった上で、少なくとももう一度チャンスが与えられたわけですから。


個人的には、現代表が活躍したことで、前監督が貶められるようなことにはならないのではないかと期待しています。


よくわからない解釈になりましたが。


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