Dr. Tuckel and Mr. Tuckel, and his team

今回は、純粋にサッカーの集団の話です。
せっかくの名勝負について思ったことを、やはり
書いておきたいので……。


勿論、これまで通り、サッカーについてというより
集団についての独断的解釈の記録です。



ここ最近、気になっている香川選手の所属チーム。
期待していた「大一番」の試合での化学反応は、
前監督方面に起こってしまいました(苦笑)。
と、言いますか、むしろ今回は、そういう化学反応が起こる
人と状況の巡り合わせだったかしら、とも思います。



どうしても舞台的な表現になってしまいますが、個人的には、
現監督も「本番の初日」として勝負をかけてきて、でも
その初日が計画通りにはいかなかった、という印象。


ただし、「選手たち」を信頼しきってはいなかったかな、と。
個人的にはベストキャストでもなかったと感じますし。


理由は、監督自身のエゴだったかもしれないですし、
単純に1+1=2としか計算できなかった結果とも思います。
本当は、人と人の組み合わせが、化学反応を起こして、
1+1=2以上の成果を出すのだと思うのですが、
それを、計算に入れることができなかった結果、と。


ただ、舞台では、実は初日が完璧ではなかった方が
公演そのものは長期のスパンで見ると大成功を収める
場合があって、スポーツだけれども、今回のケースも
そうだといいな、と願っています。



実は、近頃、成功の後、ということをよく考えます。
目標を持ち、成功に辿りついた後も人生は続きますものね。


で、それを想像すると、今回の試合に勝ち抜いての
初タイトル獲得の「大目標」達成は、一つの成功の形だったとは
思うのですが、この集団が「成功の喜び」を味わい、それ以後、
更に先を目指す為には、小さすぎる目標だったようにも感じます。


ずっと以前ですが、確か香川選手の「ここ暫くずっとCLで
やってきたチームなだけにELではモチベーションを保つのが
難しい」というようなコメントを目にした記憶があります。
多くの選手たちにとっては、そもそも取って当たり前の
タイトル、くらいの感覚ではなかったのかしら。


それが、いつの間にか、他の諸事情とも相まって
チームの今季の大目標のようにセットされていましたので、
その辺り、監督サイドと選手たちの間にやはり微妙な
溝があったと想像します。色々指摘されているように
監督自身が大舞台を経験していない故なのでしょうか。


ですので、今回、もし監督の計画通りに勝ち、タイトルを
獲ってしまっていたら、その後が色々小さくまとまって
しまっていた気がするのですね。


が、この監督は、未経験のことには慎重でも、一つの
失敗の分析から多くのことを学び取る人のようにも
見えますので、この敗戦は、後々のことを考えれば、
タイトル以上の価値があったように思えるのですが、
実際のところはどうなのかしら。




それと、信頼の仕方はどうであれ、監督の、香川選手の
能力に対する評価は、やはり高いのだろうと個人的には
考えています。先発起用を驚いている人もいたようだけれど、
こうして、こんなふうに先発で起用したからには、これは、
前々から綿密に計画していたことで、また、その監督の
思惑に香川選手がきちんと答えることができた、と
解釈するのが妥当のように感じています。


むしろ今回の香川選手の「活躍」に高評価を与えている人々は、
どれだけ香川選手の能力を過小評価していたのかしら、と
思いますし、今回はあまり良くなかったと感じる監督は
どれほどその能力に期待しているのかしら、と思います。


勝手な想像ですが、監督は、今回の最高の理想形として
「香川選手がワールドトップの仲間入りを果たすような、
スーパープレイを見せつけること」を想定してピッチに
送り込んだのでは、と考えています。ですので、今回は、
まあまあ、次第点という感じだった、と。



故に、個人的には、香川選手が、今回の試合では
もうひとつ階段を上がりきれなかったとも感じています。
少々難産(?)中、と。
で、監督のみならず、本人もそれを感じているのでは
ないかしら、という気がします。


個人的には、香川選手が、それがどんなスタイルであれ、
香川選手にしかなれないような、有無を言わさぬ、世界
トップクラスの選手になる資質があると思っていますが、
それに今ひとつ行ききれずにいる理由は、
他に対する優しさ、かなあ、と。


ただ、香川選手の場合、この優しさが選手としての魅力の
一つでもあるような気もしますので、どうにかして優しさと
勝負強さを共存させる道を見つけてもらいたい、と
素人は無責任に思いますが、それをどうにか出来るのは、
本当に本人だけなのですよね……。


でも、もし万が一、監督の中で「決め切って欲しいところで
決め切れない選手」という評価に傾いているとしたら、
その「決め切る後押し」を実践で与えるのが監督の役割と
気がついているかしら、と傍観者的には思います。
……前監督はそのあたり、本能で感づいていそうですけれど。



個人的には、この試合は、4−2で勝利か3−4で敗退の
2択だったと思っています。で、どちらになるかは、
やはり監督次第だったと。この試合に限って言えば、ですが
やはりキーは香川選手で、同選手を下げなければ、
2点取られることなく1点取って勝っていた可能性が
高かったと思うのですね。そもそも、その違いを
生み出す選手にするために、これまで香川選手に
厳しい時間を与えていたのではなかったのかしら、
と想像していますので、香川選手が何かのきっかけをつかみ
大化けするチャンスも、多分そこの十数分にはあった、と。


それが起こらなかった、ということは、それが起こるべき
タイミングではなかったということで、最後の最後に、
自らの「手腕」ではなく「選手」を信頼しきれるかという
勝負に監督が負けた、とも思えます。そして、この監督には、
この辺りが欠けているのですね。そう思っている人は多いはず。


で、今回の悲劇的化学反応による敗戦は、前監督が熱く
これを教えてくれた結果、という解釈はいかがかしら。



現監督は、積み木を重ねるように、Aを用意し、Bを用意し、
それを最後に本番で合わせれば、Cという結果が得られる、
という認識のもとに動いている気がします。ですから、
周りから見ると大一番で新しいことを試したがる、
という風に見えてしまう、と。ただ、監督の中では、
綿密に計算され、結果の出たものを最後に組み合わせて
皿に乗せているだけなのだと思うのですね。
で、理論でいけば、程度の違いはあれCを生み出す、と。


それが予期せぬ化学反応を起こすことも、もちろんある
のだけれど、それは、多分一瞬のスパークで終わって
しまうのですよね。ビギナーズラック、とも言いますけれど。



そこが人と人との関係性の不思議なところで、やはり、
例えばCという完成形を真に成功させるためには
Cを形作る人々が、何度も呼吸を合わせて、Cの実践練習を
することが必要になってくるのですよね。
選手たちは、そこを肌感覚で知っていて、監督のやり方に
違和感を感じ続けていたのではないかしら、と想像します。


また「Bをやっている間は、勝負すべきところで引き分けでも
いい」という類のメンタリティは、最後の勝負強さにでてくる
もので、後半戦、負けなければいいという試合を大舞台で
2回もやっていますから、それが出てしまったと思っています。
才能ある選手たちは、自らのメンタリティが一段低いところに
慣らされようとしているのには、多分本能で感づきますし、
多分知らず知らずのうちに、集団に拒否反応が生まれていた
ようにも感じます。


また、完成形を知らされないまま、AやBやDを
試させられていたことで、これまでスタメンで起用されていた
選手たちには、俺たちはこうだ、という集団としての
アイデンティティが希薄になってしまっていたと。
それがどこかモヤモヤとしたものになっていた、と。


前回、『バーチャル』ドレスリハーサルと書いたけれど、
やはり最後に物をいうのは、バーチャルではなく、
実践なのですよね。


人と人との実際の肌感覚が、ギリギリのところでは
ものを言うのではないかしら。


監督がチャンピオンの様に負けを受け入れよう、と
語ったようですが、これまでのメンタリティは、
決してチャンピオンのものではなかったと思います。
チャンピオンは、実践に基づいた鋭い肌感覚を
持っている者たちと、個人的には思っていますし、
ぜひ、これからはチャンピオンのメンタリティで
いってほしいなあ、と。



で、個人的には実は、リーグ戦の優勝もまだあり得ると
思っています。首位のチームが、3試合取りこぼすことも
あり得ないわけではないのですもの。集団というのは
そういうものですから。と、書いている間にも、
首位のチームは勝ってしまいましたけれども(苦笑)。


が、今回の試合で、前監督のチームが、後半残り三十分で
3点をひっくり返す可能性と、リーグ首位のチームが
今から3試合取りこぼす可能性は、同じくらい、と、
この辺りは、素人目線で理論を暴走させておきます(笑)。


個人的には、もう一度、「理論的には無理」なリーグ優勝も
真剣に獲りに行こうとしてほしいです。
そうすることで、何かが良い方向に転がると思うのですね。
そのように、選手が監督を導けばいいのではないかしらね。



もし監督が、理論だけでは勝てないことを知ったとすると
今後、どのような戦い方をするのか興味深いですし
個人的には、まだ現監督に期待をしています。
香川選手は、間違いなく、11月よりも今の方が
良い表情をしていますし、それは、方法はどうであれ、
監督が関わった結果と、個人的には考えていますから……。



……メインの選手たちの移籍が噂されているけれど、
この、監督も含めて若い集団が、この構成メンバーのまま
最低でも、もう一年、成熟してくれたら、本当に素晴らしい
集団になりそうなのに、とついつい願ってしまいます。



と、ひとしきり奔放に書きなぐったところで、
今回もそっと書き逃げをいたします。



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