成功の鍵

W杯が始まりましたね。今回も続けて、日本代表という集団について。


さて、パラグアイ戦では想像通りのスターティングメンバーでしたが、結果は予想を覆しての勝利。個人的に、エゴイスティックなところが気になっていた3選手含めて、こと後半に向かうほど、出場した選手全員がチームのためにという戦い方をしている姿を観ることができたのが嬉しかったです。同様に思っている人は少なくないのではないでしょうか。久しぶりにすっきりとした試合を観た感じ。


香川・岡崎両選手も、絶好調というよりは、やはりこの位のことは、付け焼き刃でも当たり前にできる能力の高さと意思の強さがあるのだなと思って見ていました。ただ両選手とも決めきれなかったところが少し気がかりでした。こと、香川選手は、ここで決めてこそ、という場面でシュートを外してしまったことが、個人的には気になります。最後に決めた一つ前の、枠外に飛んで行ってしまったものではなくて、もう少し前、相手に得点される前の、右に逸れてしまったほうのゴールですね。


岡崎選手も、走りながら足がもつれた場面があって(ボールは見事に守り抜きましたが)、二人とも、いろいろな面でかなり負担が大きいW杯への戦いになっているという印象でした。本来ならば、選手としてのみ集中出来るべきところ、選手以外の仕事も、気を使いつつ多くこなしているような……。


(ちなみに、香川選手が派手に枠外に外したシュートは、どちらかというとコンビネーションの乱れが原因で、多分原口選手のパスが足元に来すぎてしまったからだと思っています。最終パスを出すなら、走っている受け手のスピードと移動距離も考慮にいれ、もっと先に出さなければいけないところだった、と。香川選手が打ち損じたように見えますが、あれはトップスピードで走っている足元に、詰まるようなボールが来て、つんのめるような形になったと思っています。事によると、原口選手が、過去数週間で「ワンテンポ遅いくらいが丁度いい」というスピードに合わせてきた弊害なのかもしれません。ただ、香川選手が一言も「出し手」のことに触れないのは<少なくとも記事では見たことがないです>さすが、と勝手に思っています。もちろん、原口選手自身は気づいているのではないかと思いますけれど。というか、もし本当にそうなら気づいていてほしいです)



さて。
この結果を受けて、今後、この集団がどうなっていくのか推測しながら、人々の言葉、表情、行動などを(インターネット上で探せる限りではありますが)見てきましたが、実は、そこから感じ取れるものは、残念ながらまったくポジティブなものではありませんでした。むしろ気味が悪くなるようなものを見ているような気すらしています。もちろん、杞憂であってほしいとは思うのですが……。


現在、代表チームは、初戦本番に向けてこう動き始めているだろうな、という結論から先に書いてしまうと、結局のところ、この集団はあくまで「戦術本田」を貫かされてしまうのだろうと推測しています。理由は、現時点では、まあ、色々なタイミングが悪かったとしか言いようがありませんけれど。


遠巻きに見ている一ファンの全く勝手な想像ですが、本田選手を取り巻くサッカー協会と前監督解任というものの闇は、表面に見える以上に深かったのね、というのが、パラグアイ戦の結果を受けての反応を見ていて抱いた印象です。また、蚊帳の外にされた本田選手の「特殊能力」がどのように集団に影響を与えてしまうのかも、本番が近づき、個人的には垣間見えたように思います。



今回は、前回、書き切れなかったことを交え、前回の時点では未知数・想像がつかなかったことについて解釈を重ねてみようと思います。今回も長くなりますが、ご興味のある方は暇つぶしにどうぞ。



まず、前回、想像したことで、


・香川選手が(岡崎選手と共に)、自身の能力を示すことで力強く集団を引っ張ったところ
・同選手と共に「控え」だった選手たちが「前監督の遺産」を自分たちなりに生かし、それをベースに戦うやり方を行動で示したこと
・柴崎・乾両選手の意識の持ち方が集団に合う方向に好転し、この集団独自の何かを上乗せできるようになったこと(武藤選手はその流れに引っ張られただけの部分があるかもしれません)


あたりは、パラグアイ戦で、少なからず現実のものになったような気がしています。



が、一方でですね、


・集団が、前監督の意図とその遺産のありがたみを理解・体感できるようになった
・選手一人一人がそれをきちんと自覚しながら戦いに挑むことで、結束できれば集団は好転する可能性がある
・そこへの転換を表立って牽引出来るのは長友選手かもしれない
・集団と監督(外の権力)との良い橋渡し役になってくれるのは、長谷部選手かもしれない


という希望的観測は、おそらくは単なる希望的観測に過ぎなかったと、現時点では考えています。



と、この辺りから解釈を進めていこうと思いますが、その前に、前回触れられずじまいだった本田選手の「特異性」と「影響力」、日本・海外での立ち位置、そういう人物の「危険性」について、思うところをまとめてみようと思います。


このブログでは、本田選手の突出した能力は異常に強い意思の力、念のようなものと考えていますが、今回の一連の流れを見ていて、もう一つ感じたことがあるのですよね。それが、空気の流れや質、権力の在処、自分の利となる・不利となる人・ものを嗅ぎ分ける力、でしょうか。悪く言えば、対象物の「付け入る隙」を嗅ぎ分ける力、ですね。これまでは、それも意思や念の中に含めて考えていましたが、これはこれで別の特異能力なのだと思います。彼は、この能力も高くて、それと尋常ではない「念」が合わさって(+運で)現在の地位まで上り詰めたように思います。こういう能力があれば、何事においてもある程度の成功は収めるでしょうが、少なくとも「サッカー選手」に最も必要とされる能力ではないように思います。


ただし、以前、彼の代表での得点は、他の選手が作り出した得点チャンスを嗅ぎ分け、そこに割って入る事で「奪った」ものが多い(全てではないにしても)と書いたことがあるのですが、この特異能力は、サッカー選手としてはその辺りに生かされているかもしれません。



さらに、以前、本田選手の現10番選手(=香川選手)への嫉妬心・執着心という観点から、こういう異常な執念を持った人の念の力から、ターゲットとされた人(=もの)は逃れることができるのかしらと思い、ふと嫌な気持ちになったと書いたこともあります。その時は、ざっくり言いますと「言葉の力に惑わされる事なく、現実の能力というものをフラットに見る事が出来る人の前では、彼の能力はあまり発揮されないため、周囲の選手の能力と見る目の水準が上がり、かつ香川選手自身が成長したことにより、もうその心配はないかもしれない」というような事を書いたのですが、実際、こうして彼は彼のやりたいように再びのし上がってきている訳ですから、彼の突出した能力というものは、念と言葉だけではなく、権力の場所や空気を読む力というものもあったのだろうな、と改めて実感したわけです。


それと、すでに本田選手の執念の矛先は「日本の10番」ではなく、「日本代表のレジェンドになること」あたりになっていると想像しています。そして、そこにたどり着くためには手段を選ばなかった、という感じ。この選手は、「W杯」で活躍さえすれば、それまでの経歴がどうであろうが、人は、多くの場合、その時のイメージだけで自分を見てくれると経験上知っているのだと思います。かつ、それが、今後の彼のビジネス・人生設計には不可欠と信じているのではないでしょうか。



で、日本代表が、彼のそういう悍ましい執念から逃れることはできたのかと想像すると、まあ、できなかったのではないかなと思っています。



前回、「前監督ならば、きっとこういうチームを作った」という想像をしましたが、そこに一つ考慮に入れていなかったことがあります。それが、蚊帳の外にされた本田選手の「特殊な能力」がどんな影響を及ぼしたかという部分ですね。


で、現集団の現在地を推測する前に、もし彼が日本代表から外れ、前回想像したようなメンバーで前監督のチームが形作られたと仮定して想像を進めてみようと思います。



理想としては「潔く身を引き、代表チームにエールを送り、自分が選ばれなかったことで損害を与えたかもしれないビジネスの立て直しに真摯にとりかかる。長友選手(他にそこまで彼に思い入れのある選手がいるようには見えないので)は、その彼の思いを受け止め胸に秘めて彼の分まで代表で力を尽くす」ですが、正直なところ、これまでの実際の行動から考えるに、そういうふうに事が運んだとは到底思えません。



ですので、現実的にその仮想未来(過去?)を想像すると、仮に前監督のままだったとしても、やはりチーム作りは難航していたと思えてなりません。


本田選手は、自分が外れたことに対し、実力以外の何らかの「こじつけ」の理由をひねりだし、自分が外れたことは不当だったと主張したと想像します。事実、外されると嗅ぎ取った時点で、ああいう行動にでたのですから、批判の矛先は当然、監督であり、代表チームだったはずです。ので、公然と前監督批判と代表チームの批判をしたのではないかと推測しますし、メディアも盛んに取り上げたのではないでしょうか。


となりますと、長友選手がそれを受け、内部で前監督の方針に懐疑的な行動を起こした可能性は少なくありません。実際、同選手も何らかの形で前監督解任に関わっていると想像していますので、彼はそんなことをする人じゃない、とは言い切れないと思うのですね。そうなると、選手たちはうまく前監督の意図を汲み取れず、「仕上げ」ははかどらず、故に結果に繋がらず、事前試合に負け続ける、さらに空気感も悪くなるという悪循環に陥っていた可能性は高いと思います。


もともと前監督の信頼を受けつつも、そのやり方に不満を覚えていたかもしれない長谷部選手が、おそらくは「主力」扱いではなくなっただろう中で、積極的に集団をまとめたとも考えにくいです。大体、それができる人柄ならば、そもそも前監督の時に実際そのように行動していたはずですから。



逆に、希望的な想像としては、前監督はおそらくそういう「空気感」に惑わされにくい選手を選んだだろうと思いますし、かつ最終合宿中に大胆にチームの若返りを図ったと推測していますので、いわゆる悪影響のある「ベテラン」勢の影響力がそれほどチーム内になく、おそらく川島選手か、選出されていれば岡崎選手あたりが、今よりももう少し強い影響力を持って若いチームをまとめ、外野がどう騒ごうが、チームとしてはうまくいった、あたりでしょうか。個人的には、こちらの可能性のほうを、51パーセントくらいあったかな、と考えていました。(現実的にはやはり50:50で、どちらに転んだかわからない、というところだったと想像します)



で、本田選手自身も、代表落選し色々騒いでみたものの、結局はさほど相手にされず、自分のいないチームが躍進する姿を見ることで、彼が取り憑かれているように見える「異常な欲」のようなものから解放された、という可能性もないことはなかったと思っています。



ですが、これまでの実際の経緯を見ていると、本田選手という人がそう簡単に身を引いたとも考えにくく、かつ周囲(=現日本サッカー協会に関わる権力者たち)にとっても、彼の「代表入り」はどのような形ででも確約されなければならなかったのだと想像しています。
が、前監督のほうが折れて最終メンバーに本田選手を加えていた、とも思えません。


そうなると、前監督解任、そして現在の状況というものは、必然(不可避)だったようにも思うのですね。



では、なぜ本田選手が日本のサッカー協会に対しそれほどまでに影響力があるか、ですが、その理由を個人的には下記のように考えています。


彼はよく「日本人らしくない」と評されますが、個人的な印象は真逆で、現代表選手の中でも突出して「日本人的」と思うのですね。(「日本人らしい」というのも定義は曖昧ですが、単純にイメージだけで語るとすれば)日本しか知らない日本人が「日本人らしくなくてかっこいい」と感じ憧れる事ができるタイプだけれど、実際には、海外では「日本人だから」という扱いを受けている人、という感じでしょうか。ですから、海外における彼の率直な評(W杯での彼しか知らず、その印象のみで彼を語る人を除く)は、典型的日本人、ということが多いのではないかと想像しています。良くも悪くも「日本」の人ということですね。


それは、南ア以降の彼のキャリアの作り方にも現れているのではないでしょうか。他のサッカー選手たちが、皆、サッカーの実力で、所属チームの「国」に認められてきている中、彼だけは、不思議なほど「日本で有名な・日本のスター」本田選手として現地へ入るのですね。そして、逆に日本では、「世界で活躍する」選手としてその地位を得ています。彼は、どこにおいても、サッカーの実力ではなくて「どこか遠いところで有名」というイメージを持ち込むことで、その地位を得ているように思います。


(ちなみに、良くも悪くも本当に「日本人らしくない」人を挙げるとすると中田選手で、彼は単純に世界のどこに行っても、「日本の中田選手」ではなく、「中田選手」という日本出身の人、という捉えられ方をしている気がします。言葉にするとごく微妙な違いのようなのですけれど、大きな違いです)



で、本田選手のような「考え方も、サッカーの水準も実は日本人的なのに、イメージだけは日本人らしくない人」をありがたがる人々の中に「自分の経験でしかサッカーを見ることができないサッカー経験者たち」がいて、ここに、ワールドカップに出たことのない国内OBのほとんど、日本サッカー協会の中枢にいる、部活・アマチュア時代のOBたちが含まれるのだと思います。理由は、彼らにとっては(世界レベルのサッカーまで頭がついていかず)本田選手レベルの話が一番理解しやすいから、ですね。(故に、中田選手は同協会から疎まれたわけですね。本当に世界で通用した人でしょうから)



ブラジル以降、本田選手は多かれ少なかれ自分のサッカーの実力を悟り、それをある意味で誤魔化すように「サッカービジネス」に手を出し、4年間かけて、上記日本サッカー協会の権力者たち(恐らく、それ以上の権力者にも)に重宝されるような立ち位置を作ってきたのだと、個人的には理解しています。海外では「日本のスター」という看板を使って。


彼には突出した「権力や自分の利・不利益を嗅ぎ分ける力」、「思い込みによる意思の力」があると推測しますから、自分の「ビジョン」と「言葉の力」で力ある老人たちを引きつけ魅了し信じさせ、現在の日本サッカー協会に、選手でありながら強い影響力を持つようになったのだとしても、不思議はありません。彼は、老人たちの愛する「日本サッカー」を脅かしませんし、協会にとっても、都合の良い選手なのでしょうから。



が、単純に考えまして、このままいけば、今W杯の彼の出来如何では、そういう人物(自分の低いレベル+地に足のついていない理想論でしかサッカーを見る事ができず、事実と認識との間にかなりの乖離があり、かつ、自分の意見のみが正しいと思い込むことができる人物)が、日本サッカー協会に影響力を持ち続け、ゆくゆくはそこの権力者となり、日本サッカーを主導し、子供たちを指導する立場になる、と思うのですが、一ファンとして、日本のサッカーが発展してどんどん強くなっていって欲しいと望んでいますので、そういう事態は絶望的なほど危険なことに思えてなりません。



そもそも「本当にサッカーを知るOBたち」は、今ですら違和感を覚えていると察しますが、それで納得がいくのでしょうか? と疑問にも思います。少なくとも個人的には、そういう事態は心から望みません。特に、下に有望な若手がたくさん控えている現状においては。香川選手のみならず、さらに若い方の久保選手まで潰されることになるなど、想像するのも悍ましいほどです。




ここで、話を現代表という集団の現状に戻し、上記の「本田選手」に関する解釈を考慮に入れた上で、パラグアイ戦後、集団に起こっているのではないかと想像できることをまとめてみます。



すでに、彼の特異能力は、言葉の力・念と、空気読み権力の在り処を嗅ぎつける能力と書きましたが、パラグアイ戦で(予想外に早く)結果が出てしまったため、当然、集団内における序列は表立って激変したと思います。それを受けて、本田選手が行ったのは以下のようなことと推測しています:


・集団内の空気を読み、それに対し自分に都合の良い解釈をし、迷いなく公言する=空気の本質を惑わせ掏り替えてしまう
・現在の集団の中心にいる人物を嗅ぎ分け、使えるものは全て使って懐柔し、その地位に取って代わる


具体的には、


・「全員がチームのために」という現在他の選手たちが拠り所にしようとしている「概念」を捻じ曲げ、周囲に「自分」をその仲間に入れないのは間違いだという気にさせ(ようとす)る。自分が、皆の仲間になって活躍できるよう、皆が一丸となって協力してくれるべき、という考え方に集団を導く(少なくとも監督はそう思わされている可能性が高い)

パラグアイ戦までの合宿中の「香川選手=現在の’権力’」の集団内での行動や立ち位置を模倣+それまでの自分の立ち位置と入れ替わる形を作っている。当然、自分に起こったことを、リバースして再現することをイメージしつつ、です。かつ香川選手と1対1、もしくは2対1で「自分の思いを直接伝える」等のことをしたかもしれないと推測。「仲間意識を持つことの大切さ、本番にかける意気込みを『説く』」など。



とにかく、まだ彼の言葉が効力を発揮するとするなら、その唯一の拠り所は「W杯で最多3得点を決めた」「W杯3回目の経験者」という事実です。選手たちは皆、少なくとも彼の現在の実力は把握していると思いますが、「特別で何が起こるかわからないと言われるW杯の舞台でなら、彼は何かしてくれるのかもしれない」という部分だけは、まだ誰も実感できておらず曖昧なままなのですね。事実、実績もあるわけです。故に、実力云々にかかわらず、W杯との相性はいいのかもしれない、と思わせられてしまう、と。


実際、会長や監督は、それ(=本田選手の特異能力=大舞台・逆境に強い)が、前監督の現実主義的なサッカーよりも確実性があると判断したのでしょうから。確かにデビュー時の成功体験により、W杯の舞台に対する恐怖心はないのかもしれません。ただし、これは、ほぼ「運任せ」と同義と、個人的には思っています。しかも体現できる可能性が決して高くない「運任せ」です。一つ言えるのは、仮に成功したとして、その成功が「チーム全体の活躍」には決して繋がらない、ということではないでしょうか。



さらに、パラグアイ戦後から昨日までにかけての選手たちの言葉と表情から、集団内の他の鍵となる選手たちの現状を推測してみます。



まず、本田選手の「自己防衛策」にたやすく流され、集団に悪影響を及ぼしているように見えるのが、長友選手。同選手は、現集団にとっては、利となるよりは害となる可能性の方が高い人と危惧しています。ベテラン選手で、本人にはまっとうなプロ意識と実力もあり、良くも悪くも集団の空気感を変えられる人とは思うのですが、彼は少々致命的なくらい客観的判断力に欠けるように見えるのですね。


そもそも、この選手が集団内にいなければ、前監督解任にまでは至らなかったかもしれませんので、度を越した浅はかさは罪だと思うようになりました。本田選手の強みは言葉(+集団内の序列を嗅ぎ分ける力)なのだと書きましたが、長友選手は、あまりに「戦友」の表層の言葉のみに騙されすぎ、事実を見極められなさすぎ、軽率に行動を起こしすぎのように見受けられてなりません。故に、現在では、本田選手を現在のような「化け物」にした責任の一旦はこの選手にもあると考えています。結局のところ、長友選手も、日本代表という集団においては、真の意味では自分のことしか考えていないのかもしれません。



また、長谷部選手は、その良心を期待していたのですが、今は、むしろ彼は後の協会幹部候補という認識のほうが正しいのではないかと思うようになりました。彼は基本、変則的にではあっても「戦術本田」を貫くのではないかと想像しています。



それと、かなり気になるのが、香川選手の顔から、パラグアイ戦まであった厳しさが消えたように見受けられること。長友選手が、「パラグアイ戦まで、合宿中の彼の表情は冴えなかったので、彼が活躍して笑顔になって嬉しかった」というような、個人的には的外れにも思える発言をしていたのも気になりましたが、ホッとしたのか、それとも、再び本田選手に懐柔されかけて/気を使っているのか、締まったいい表情の背後に見え隠れしていた何か「核」のようなものが、ロシアに移動して以降アップされる写真の表情の背後に無くなってしまったことが恐ろしいです。


個人的には、これが、前監督、もしくは他の彼を使わなかった監督たちに危惧された部分なのではないかと想像していますが、精神的に弱い、と言うよりも、根本的に優しい性質の選手なのだと思います。故に、ガツガツとした何か、自己中心的な誰かの言葉、そういったものも含めて、自分への要望には全て応えよう合わせようとして引き込まれてしまう、身動きが取れなくなってしまう、と。ですから、これまで懸命に準備を重ね、努力を重ねてきて、今ここでそういった空気に(再び)呑まれてしまうのであれば、これまで日本代表で苦汁を舐めてきた理由の根本は、運や巡り合わせではなく、間違いなく香川選手自身にあったということになってしまう、と。


以前、ターゲットとなったのが香川選手だったという組み合わせも、日本代表で本田選手が奇妙な力を発揮し続けられた原因の一つと書いたことがあるのですが、結局は、そういうことなのかもしれません。もし、彼が「全員で戦う」という名目のもと、再び自己を犠牲にし本田選手に活躍のチャンスを与えることに終始するのであれば、彼は代表には縁がなかった選手ということ、と想像しています。



また、選手たちが前監督の遺産のありがたみに気づいて、それを自覚しつつプレイすることが、少しでも成功を引き寄せる鍵と考えていますが、これも現時点では起こっていないと解釈しています。きっと選手たちにとっては、前監督の存在そのものが過去であり、今自分がある姿の一旦(どころかかなりの部分)を形作ったのが、前監督だということすら自覚していないのかもしれません。もちろん、選手たちにとっては「今と現監督と現チーム」が大切で、過去のことなどもう考える余裕もなく、必要性も感じていないのかもしれません。



そして、結局のところ現監督が「今はまだ隠している」秘策とは、コロンビア戦での香川選手と本田選手の共存と個人的には想像しています。さらには、訴訟を控え前監督との関係も悪化しているでしょうから、解任の正当性を示す為にも、現監督としては、前監督を彷彿させるような戦い方(=現メンバーが基盤として持っている最善の戦い方)はしてこないだろうとも思います。このままいけば、香川選手を筆頭に選手全員が「本田選手の経験と大舞台での決定力にかける」戦い方をさせられるのだろうことは容易に想像できますし、課せられた戦い方に違和感を覚えながら、チームのためにと言い聞かせ試合に挑む選手も出てくるはずです。そういう戦い方の結果は十中八九運頼みですし、しかも、コロンビア側は、この「秘策」を読んで対策すらしてくるのではないかと予想しています。もっと言えば、日本代表はほぼ玉砕覚悟で挑まざるを得ず、かつ順当に玉砕されかねないとも思います。まあ、それでも仕方がないのでしょうけれど。


また、そういう集団が逆境で結束し、何らかの結果を出すためには、集団の構成員全員が、「拠り所とする何か」を共有することが必要ですが、現在のところ、全てがうまくいかなかった時、この集団が頼らざるを得ないものは「本田選手の特異能力」になるのだと思います。今は、「全員でチームのために」という合言葉が、そういう方面へ進んでいるように感じられてなりません。そして、その先にあるものは、本田選手の成功であって、チームの成功ではないように思います。個人的には、それが然るべき道とは思えません。




もし、前監督のままで物事が進み、うまく戦う集団を仕上げることが出来ていたと仮定して想像しますと、前監督は、パラグアイ戦のような「集団の成功例(それがどんなものであったにせよ)」をおそらく練習試合第1戦目(=ガーナ戦)で確立し、以降の厳しい合宿期間を、集団の規律と精神面、戦術とその遂行精度、及び結束を磨き上げるという準備に費やし、本番で緊張することなく試合に挑むことができる「戦う集団」に作り上げる、という経緯をたどって開幕を迎えたと推測しています。


現集団が、最後の合宿期間を使って、上記のような地に足のついた綿密な準備をしてこなかったことは、個人的には、明らかなように見えています。


要は、集団は監督のもと、現実的に戦う準備もできておらず、真の意味で結束した状態でもなく、どころか、少なからず「チームの為に全員で結束」を「結束する為には輪を乱す人物のわがままも受け入れなければ」という奇妙な方向に惑わされてしまっている節さえあると思っています。所詮、現在集団を統括する力を持っているのは現監督なのですし、外から眺めている限りではありますが、この人物に現実的で冷徹な判断ができるようにも思えませんから、仕方がないのかもしれませんけれど。



ただ、集団が惑わされる原因は、拠り所の選択が間違っているからであり、なぜ間違えてしまうのかというと、集団内に虚と嘘が含まれているから、だと思っています。


何度も書きましたが、「現実的な準備」という拠り所がない今、この集団が目的を達成するのに頼れるものは真の意味での結束だけです。で、集団が真の意味で結束したいのならば、虚や嘘を内包していてはいけません。で、この集団にとっての虚や嘘が何かと言えば、そもそもの、現集団の成り立ちの経緯と、前監督の解任という事実の扱い方だと思います。


前監督への同情という感傷の問題ではなく、事実の問題として、現集団はそこを把握する必要があると、個人的には考えています。


「現集団のあり方」を考えた時、この集団が、少々特異な経緯を経て、少々特異な集められ方をしたことは、変えようのない事実です。現集団というものは、前監督の不明瞭な解任と、選手では、こと久保選手の不可解な選外という経緯があった上で成り立った集団で、少なくとも本田選手と現監督は、その経緯を経て今のポジションにいるわけです。成立の経緯にそういう「疑念」がある集団、というのが、現集団の出発点=客観的事実なのですね。


そもそも、なぜ前監督が解任され、それまで選手たちが準備してきたものが直前になって覆されなければならなかったのか、そういう必要性を感じていた選手はどのくらいいたのか、そのことを、集団内で、少なくとも選手間で腹を割って話し合ったことはあるのでしょうか。解任されありがたかったという選手も、何とも思っていない選手も、残念に感じていた選手も、経緯に納得できずにいた選手もいたはずです。この集団が本当の意味で結束するということは、そこの部分を徹底的に話し合い、その上で全員が何らかの結論を出し全員が納得するということが出発点です。


もちろん、現時点で全選手がそれを理解した上で今に至るというのであれば良いですが、そもそも過去の3戦から現在に続く経緯を見る限りそうであるとは考えにくく、集団内には今もどこかに違和感がくすぶっているはずですし、現在の「上面の結束」の背後には、間違いなく「そのことにはあえて触れない」という暗黙の了解があるはずです。が、それを内包していては、真の結束など望むべくもない、と言いたいのですね。そして真に結束しなければ、集団、しかも付け焼き刃で、戦いの準備も不十分な集団が、何らかの結果を生むとは思えません。


関連して、他にも事実がうやむやにされている部分も少なからずあるように感じます。


例えば、現監督になり、選手間のコミュニケーションが増え、選手たちがやりたいことができるようになり、急ピッチでチームが仕上がっている、というような評を目にすることがありますが、「5月の最終合宿で一気に仕上げ、結果を出せる集団を作る」という意図で、前監督とそのスタッフがここまで選手たちを鼓舞し作り上げ準備を進めてきただろうことは、以前解釈した通りです。そもそも、候補選手たちにはその素地があった、ということですね。ですから、現在本当に「急ピッチで仕上げる」ことが出来ているのであれば、それは(選手の能力という観点から考えれば)九割方「前監督の準備」の賜物と思います。成果として現れただろうものが然るべき時に表に現れただけ、ということですね。現監督の成果は、選手たちが自分で考えるようになった、という一割で、もちろん、そこはとても重要な一割なのですが、それが実際に効果を生む体の準備と考え方の基礎を整えたのは前監督、と思うわけです。そこの認識が曖昧なように感じます。


選手たちの自主性が身を結んだと考えられるパラグアイ戦の「成果」ですら、外から見ていると「現監督の手腕」というよりも「前監督の遺産」の賜物+選手たち個々の頑張りと呼ぶほうが正しいのではないでしょうか。こと、香川・岡崎両選手が、監督役も演じていたようにも見えました。


また、これは単なる想像ですが、本番前の練習試合を組み、居心地の良い合宿所を選び選手たちの為に用意したのは、前監督下のスタッフなのではないでしょうか。もしそうだとしたら、選手たちは、感謝すべき先をきちんと感じ取り、自覚しているでしょうか。



ですから、より事実に近い認識に基づく、最善の、かつ集団内の現状や人間関係に左右されることない、現集団にとっての「拠り所」というのは、選手が好むと好まざるとに関わらず、前監督しかないのだと思います。現在、目の前にはおらず(故に忠誠心がぶれにくい)、選手たちが思いを馳せるべき正当な理由もあり、間違いなくその遺産が集団が戦う時の拠り所となり得る、唯一の人物ですから。前回も書きましたが、この集団が真にまとまり何らかの成功を収めることができる唯一の道は、選手が自分たちの中に残された前監督の遺産を自覚し、前監督の無念を汲み取り、真剣に接してきてくれたことへの感謝の気持ちを結束の拠り所として、我武者羅に努力した時のみと、個人的には考えています。


自分たちの4年前の無念や悔しさを晴らすぞ、と一人一人が思っている限り、この状況下では、確変も、もちろん成果も望めない気がします。前監督の解任という事実は、実のところ、自分たちの3年間の努力を否定され成功の可能性を奪い去られたようなものなのですから、いっそ、全員が、不甲斐ないサッカー協会に対し「選手の目線からすれば前監督は間違っていなかったことを証明する為に試合に臨む」くらいの気持ちであってすら良いと思っています。単純に、現状況下では、それが一番集団内に虚が含まれず、純粋に全員で目指すことが出来る、と推測するから、ですね。


ことマスメディアや、現日本サッカー協会の権力者たちには正しく理解されなかった、前監督の意図というものは、選手たちの多くは、今の方が、もっと体で理解できていると想像しますし、それに、今では、長友・長谷部両選手よりも、乾・柴崎両選手のほうが、そういう認識を持てるのかもしれないとも思います。さらに、成功しようがしまいが、同集団のW杯が終わった時、前監督への感謝をきちんと選手たちが発言できるようでなければならないとも思います。もし、同集団が何らかの成功を収めたとしたら、選手たちが発すべき最初の言葉は、現在のコーチ陣へはもちろんのこと、前監督とそのコーチ・スタッフへの感謝と思いますし、こういう状況でそれができるような集団でなければ、成功など望むべくもないと、個人的には考えています。


仮に奇跡的にそうなったとして、本田選手(ことによっては、長友・長谷部選手も)が集団のそういう結束の仕方にどう反応するかは、彼(ら)次第です。そこで、集団の決めた結束の中に入れ(ら)ないのでしたら、それは彼(ら)自身の責任ですし、集団も納得出来ない人間を集団内に組み込む必要はありません。それが、虚を内包しない結束=良い結果を望める唯一の手段ということだと考えています。


本田選手に関して言えば、「W杯」というものの気まぐれで成功を勝ち取ったのですから、その恩恵を蔑ろにしてきた付けは、やはり「W杯」で払わされるのではないかなという気もします。サブになり本田選手の人間性が試されている云々と言われるのを目にしますが、彼の場合は、既にそういうレベルですらなくて、少しでもまともな人間に戻れるか否かの瀬戸際というくらいかもしれないと、勝手に思っています。それがこの集団や協会にとって最善というよりも、彼自身にとって、異常な欲と執着から逃れるきっかけを得ることに繋がるのかもしれませんし。そもそも、現時点では彼がサブになるとは思っていません。



もし、現監督の「戦術」に選手たちが納得できないところがあったとするならば、今回に限っては、選手たちには臆せず反旗を翻す権利があると考えます。少しでも、前監督のままで良かった、前監督の意図を体現する方が勝つ可能性があると体感することがあったなら、その選手は、妥協せず、それを口に出して、隠された「虚」の部分を出来るだけ早く表面化させるべきと思います。結果如何によっては、初戦の後でも遅くはないかもしれませんから。川島選手や、酒井宏樹選手、願わくは、香川選手あたりも、もっとそういう部分で声をあげて然るべきではないかと思っています。



と、まったくの独断と偏見で、勝手な想像と解釈を長々と書き綴ってきましたが、この集団がこのまま成功することは間違っていると、本能的に感じているものの、罪のない選手たちには、きちんと正当な活躍の場が与えられて欲しい、成功して欲しい、と願ってしまうファンの気持ちを整理して願望にまとめると、このあたりになる、といったところでしょうか(苦笑)。



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