集団の良さ

何だか妙に忙しい日々が続いておりますが、
皆さんは、いかがお過ごしでしょうか?



突然ですが、シェイクスピアが、その生涯の演劇活動のほとんどを、
貴族お抱えの、一つの劇団に所属して行っていたことをご存知ですか?


……いつものように、学術的正確性はきっぱり無視いたしまして、
ざっくりと話を進めてまいります(笑)が、その劇団というのが、
エリザベス1世時代、チェンバレン卿の家臣団(Lord Chamberlain's Men)、
後に、ジェームス1世直属の家臣団(King's Men)として活動した劇団。


そして、シェイクスピアを含む主要団員達は、権力者の庇護を盾に、
当時ロンドン市の役人からはあまり良く思われていなかった演劇活動を
上手く商売にすることに成功した、卓越したビジネス集団でもあったようです。


当時の劇団には、演出家や役者という専門職があった訳ではなく、
劇団のメンバーが、とりあえずなんでもやっていたのですね。
ですから、シェイクスピアも、まずは役者であり、その上で、
詩人であり、劇団付きの劇作家であり、また劇作家であるがゆえに、
いわゆる「演出家」的な役割も担っていたと考えられます。



そして、この劇団の主要メンバーというのはですね、
多少の変動はあったものの、少なくともシェイクスピアの活動期間中は、
ほぼ固定していたと考えられています。
ですから、シェイクスピアの書いた芝居のほとんどは、
ほぼ同じ役者メンバーで演じられていたということになりますね。


手持ちの駒(役者)が決まっていて、それで賄える範囲内で、
次々と新しい作品(芝居)を作り続けていたというわけです。
商売として成り立たせる為、3−5本の芝居を同時進行で公演することもあり、
役者たちにとっては、なかなかスリリングで、愉快に大変だったようです。



偉大な文学者のように語られることの多いシェイクスピアですが、
むしろ現代風に言いますと、公演と劇団経営に明けくれた舞台人という、
という方が真実に近いように思います。



そんな事情を頭に置きつつ、シェイクスピア作品を舞台化していきますと、
一人何役もこなせるよう、配役や場面が絶妙に計算されて配置されていて、
固定少人数で芝居を作り続けた人々の、合理性の極を感じたりするのですね。


また、シェイクスピアの芝居に共通する、登場人物の特徴の構成を見ますと
(ほぼ同じ役者たちが演じていた訳ですから、似たような構成になりますね)、
この劇団がいかにバランスの取れた役者集団であったかが、
伺い知れたりするのです。




……で、早速いつもの話題に(笑)。実は、V6の活動構造が、
シェイクスピアの劇団のそれと重なってしまうのですよね。
ビジネス的な部分は置いておくとしても、同じメンバーで、
色々なイメージの異なる作品を作り続けているわけでしょう。
ここ最近は、コンサートも6人だけで作ってるのだと聞きました。



実は、シェイクスピアの劇団といい、V6といい、
何かの繋がりをもった一つの集団が
何か一つのものを作るという構図に、非常に心を引かれます。


勿論、演者により、向き不向きはあるはずですが、
個人的には、ソロ活動からよりも、
集団活動から生み出されるものに、魅力を感じるのですね。



でも、その「集団」というものを作るのは、本当に難しいのですよね。
舞台芸術に限って言えば、人が集えばなんでもよい、という訳ではなく、
やはりきちんと能力の高い人々の集りというものが理想的。


が、能力のある人々ばかりを集めれば最高の集団が出来るかというと、
そうではなく、やはり、人間関係のバランスがとれた集団というのが
最も理想的。


で、才能ある人材の群れが、そういう「理想的」集団になれるかなれないかは、
本当に運の要素が強く、ましてや、長く共に活動を続けていくことができるほど
バランスのとれた人間の集団が出来るというのは、
本当に稀なことと思うのですよね。


が、それをなんだかケロリとやっているV6。
……ジャニーズ事務所というところは、アイドル事務所と言われながら、
実はさりげなく凄いことをしていると思います。
そのうち、その「凄さ」が、目に見えて
分かってくるようになるのではないかしらね……。



ところで、集団としてのV6の印象は、万華鏡だとは思いませんか。
二つの三角形が、重なったり、離れたり、くるくると回ったりして、
色々な形を作っている感じ。驚くほど自由に動き回るのに、
それぞれの三角形に引力があり安定していて、次々と形体が変わっても、
その形を作る6つの点はぶれない、という印象です。


V6に魅かれる最大の理由が、この集団のそういう「完璧な均衡」。
よくぞこの6人を選んだなあ、という、一言では言い尽くせない、
様々な意味でのバランスの良さ。


きっと元々あったそのバランスの良さも、15年という時間をかけてどんどん成熟し、
現在の絶妙さにたどりついたのでしょうね……。とにかく今年などは、
どの方向にも開花できる、ある種の臨界点にいるような感じすらあって
どんな方向に向かうのかしらと、想像しただけでドキドキしてしまいます。



以前も書きましたが、PV制作などでこのグループと仕事をする監督たちは、
仕事相手として、この、かっちりと出来あがったバランスの良い
集団が現れるわけですから、本当に、なんと言いますか、
芸術家職人冥利に尽きるというか、お金をもらう商売契約なのに、
創作意欲をちゃんとくすぐられる仕事ができるのだろうなあ、
というか、なんとも羨ましくてなりません。
……ああ、V6、シェイクスピアなどやらないかしら。



そんなことをふと思うのも、近頃、ずっと一人で
仕事をしているからでしょうか。
この目には、可能性に満ちた、6人の職人演者集団が、
なんとも眩しく映ってなりません。



……と、気付くと、今回は、単なる愚痴になっていますね(苦笑)。
次回は、また愉快にお届けできるかと思います。
どうか、今回はこの辺でご容赦を。



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