「良識」

ニュースなどに見る、ここ2,3日の政府・首相の言動から、
災害・復興対策よりも、政権のイメージ回復に
躍起になっている様が窺い知れ、見ていて情けなくなってしまいます。


取りあえず直面する危機を、周囲の手助けで脱した今、
次の深刻な課題が行き詰り、どうしようもなくなるまで、
さらなる愚行を重ねるつもりかしら、とこの目には奇妙に映ります。


被災地に住む方々をはじめ、日本の多くの人々が、
助けあい協力しようとしている中で、誰よりも、
自分の事ばかりを考えて行動しているように見える人物たちが、
この国の首脳陣というのは、本当に情けないこと。
政治家云々以前に、人としての良識はあるのかしら、と
疑いたくなってしまいます。


どうしようもないとは分かっていても、
現政府が、これからも政権を担っていくということは、
一国民としては、当面、安全な地域のスーパーに
物資が不足することなどよりも、ずっと不安に感じます。
どうにかならないものなのでしょうか……。


メディアは、これを機に、政府のあり方そのものを問うような
きちんとした報道をして欲しいと思います。


個人的には、原発の問題が収束した後に、
ぜひ今回の災害後一週間の与野党それぞれの動きを、
何らかの形で、大々的に発表・報道してほしいと願っています。
誰が、何に対し、いつ、どのように対応したのか。
こと、直接事情を知る人々の声は、明確に、事実として
記録に残しておいて欲しいと思うのです。今回の件に限っては、
可能な限り、包み隠さず、誰に目にもわかるよう
事実関係を発表した方が、例え一時的には混乱しても、
結果的には不要な人災を避けることになり、
今後の国の為になるような気がしますが、
皆さんは、いかがでしょうか……?


政府のメディア・情報操作で、今回の失態の数々が、
うやむやにされ、現政権が続くようなことになれば、
今後、本当に何が起こるかわからず、恐ろしいと感じます。


情報の受け取り手である私たちも、
きちんと「真実・本物を見極める目」を持ち続けて、
それぞれがきちんと良識ある判断を下せるようでいたいですよね。




また、個人レベルの活動でも、そういう「目」を持っていれば
自己満足の善意行動に走らないで済むのではないかと思います。
(既に、あちこちで注意を促されている、思い付きの
ボランティア活動で、かえって現場を困らせる、といった行動ですね。)


「自分には、これが出来る」という自己認識が
正確で明確であればあるほど、それぞれが最も役に立つ、
被災地への協力をすることが出来るのだと思います。


個人的には、「何が何でも、特別な事をしなければならない」
のではなく、もし熟考の上で、
「今は、これ以上自分に出来ることはない」
と判断したら、むしろ特別な行動は避けて、
常識的に普段通りに、自分の生活を続けるということも
広い意味での大切な協力と思うのですが、
あまりそういうことは指摘されていませんよね。
なぜなのでしょう。少々不思議です。



また、芸術分野に関わる人間としては、今、この時点で、
「被災者の方々を慰めてあげたい」と銘打って行う芸術活動にも
共感を覚えません。被災地の方同士、それぞれ助け合う中で、
自然発生するようなものは別ですが、
義援金を募るといった現実的な目的があるのでない限り、これは、
創作活動に携わる者の自己満足としか、この目には映りません。


勿論、そういった表現をすること自体に反対するわけでは
ありませんが、その表現を、今この時期に「届けたい」とする意識が
自己満足と思うのです。もしも、励ます気持ちを表現したいのなら、
つべこべ言わずに表現して、そっと発表すれば良いだけのこと。
歌であれ詩であれ、それが本当に被災者の心を打つものならば、
物資とは異なり、「届け」なくても、
いずれ自然と伝わって行くものなのだと思います。
その作品を、心の慰めと受け取るか取らないかは、
被災された方々次第なのですもの。それを、安全な場所から
一方的に慰めとして押し付けることは、本末転倒と感じます。


それよりも、もしも知名度のある人々ならば、
それぞれの持つ影響力、財力に応じて、冷静に、
現実的な支援に繋げていくほうが、
よほど役に立ち、素晴らしいとは思いませんか?



話が少々飛ぶようですが、そういう観点から考えて、
ジャニーズ事務所」という組織の持つ良識は、
もっときちんと評価されて良いのではないかと思います。
今回の災害後、今まで、興行中止についての
的確な決定を下した事と、現実的な支援を行った事以外には、
ほぼ目立った動きがなかったように見受けられることは、
良識以外の何物でもないのではないでしょうか。


事務所の社会的影響力の大きさを考えると、このような災害時には、
沈黙を守ることこそ、きっと最も必要とされることですよね。
安易な動きを見せれば、被災地以外の地域にも、不要なパニックを
引き起こすことになりかねないのですから。
(そういう愚行を、現在、政府が、情報公開義務という大義名分の下に
行っていますね。買いだめなどのパニックは、実のところ
政府の行う不要な会見や「国民の皆さんへのメッセージ」の多さから
引き起こされているのだと思います。腹が立ってなりません。)



以前、「アイドル事務所」などと呼ばれるジャニーズ事務所
「すごさ」というものが、そのうち目に見えてわかってくるように
なるのではないかしら、というようなことを書きましたが、
今が、もしかするとそういう時期なのかもしれませんね。


日本の「アイドル」というものは、とても特異な存在で、
非常に大きな社会的役割を担っている人々なのだと思います。
ことジャニーズの「アイドル」たちは、一種独特の不思議な親密さで、
何十万という単位の女性たちの心の支えとなっているわけでしょう。
単純に考えても、これは並大抵のことではありません。
(そして、これは姉の受け売りですが、
市場で経済を動かすのは、実は、女性なのですよね)


さらに、一般の人々への知名度も非常に高い。
彼らが動くということは、経済が動くということ。
なんだかんだ言っても、その影響力は計り知れません。


昨年から、ジャニーズ事務所という存在を
意識的に観察するようになりましたが、この組織は、実は、
「そういう立場であることに、自覚と責任を持つ」
という明確な意思の下に統率された、
良識ある人々の集団であるように、この目には映るのですね。
大げさに聞こえるかもしれませんけれど……。



再びやや話が飛びますが、舞台芸術の意義というものは、
医療や科学技術のそれのように、
目に見えて判るものではありませんよね。
ですが、こういう災害時には、
やはり価値のあるものなのだと気づかされます。


災害時には政府、そして復興時に必要とされるものは、
芸術なのではないでしょうか。


「芸術」という言葉を使いましたが、観念的な「芸術」のことではなく、
生活に根付いたもののことを言っています。
娯楽という表現を使う人もいると思いますが、まさに娯楽のことです。


私見ですが、芝居という舞台芸術に関して言いますと、
個々人の観念の表現になってしまった芝居など、
まったく意味がないと思っています。うまく言えませんが、
芝居は「行動」を表現すべきもの。行動には思考が含まれ、
人々の生活に繋がります。そして、必要とあらば
政治を、経済をも動かす影響力を持ち得るもの。


けして小難しいことではありません。ふと
「ああ、この歌を聴くと、なぜかやる気が沸いてくる」とか、
「次の映画や芝居を見るために頑張ろう」といった気持ちになることが
ありますでしょう。そういう活力を与えてくれるもののことです。
そして、その活力は、こと復興時に必要とされるものですね。


時には、泣かせて思考を促し、時には、笑わせて現実を忘れさせる。
舞台芸術、特に芝居や歌というものは、人間の感情そのもの、
さらには生活そのものに、直接、訴えかけるものなのですよね。


そして、こういう活力を生み出すものを、身体を使って表現し伝えるには、
個人的な、ちまちましたことを主題にしているようでは具合が悪いのです。
ですから、以前も書きましたが、「曖昧な真実」が必要なのですね。


具体的な表現は、一つの意味を様々な方向へ向かわせてしまうけれど、
曖昧な真実は、万の意味を、一つの方向へと向かわせることができるもの。


例えば、今、必要な言葉は
「キミとボクにできること」や「一つになろう」などではなくて、
「行こう、希望よ」
なのではないかと思うのです。(いい言葉ですよね、これ……。)


と、ここまで書くと、既にジャニーズの演者の活動とも
重なる部分が多くありませんか?



野球や相撲が、かつての影響力を失って久しいようですが、
もしかすると、今、日本で最も影響力があるのは、
この事務所の演者の人々なのかもしれませんね。



阪神淡路大震災の際に発足したという、
J-Friendsという集団の活動を、海外にいたため、
殆ど知りませんでしたが、6年という長期に亘り、
被災した地域の教育委員会へ金銭的支援を続けるということの、
目的意識の明確さと、計画の現実的な的確さ、
そして確実な実行力と成果とに、
もっと正当な評価が下されても良いと感じます。


「ジャニーズ」という名を冠した活動というだけで、
活動そのものを売名行為と蔑むような態度をとる人々も
いたのだと聞きましたが、6年という期間、
毎年、億単位の寄付を続けることは、
冷静に考えれば、単純に素晴らしいことです。



今回の大災害に対して、どのような行動を起こすのかは
わかりませんが、それがどのような行動であるにせよ、
平時に「良識人」たちから「アイドル」という
色眼鏡で見られていた人々の力の大きさが、今回は、より明確に、
目に見えてわかるようになるのではないでしょうか。



なんだか、また長く、まとまりが無くなってしまいましたね……。
ごめんなさい。



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