冬至祭

先日に引き続き、再びこの裏ブログを書いています。
なんと時間があるのです(笑)。一足先に休暇(もどき)なのです。
連休二日目、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?



今回は、クリスマスについて書いてしまおうと思います。


実は、英国に長く居たせいか、「クリスマス」という時期に、独特の、
英国的なイメージを持っています。居た業界の影響もあり、
少々古いヴィクトリア様式(?)のクリスマスのイメージで、
まさに、ディケンズクリスマス・キャロルの世界ですね。


ので、今でもクリスマスが近づくと、忙しない様な
浮足立った様な、でもどこか楽しい気分を思い出します。



ご存じの方も多いと思いますが、英国のクリスマスは、
どちらかというと日本のお正月のようなもの。
ロマンチックな恋人との時間や、ディズニーランド的イルミネーション、
というイメージはあまり無いのですよね……。


近頃は、英国のクリスマスも随分商業化されていますが、それでも、
ヴィクトリア文学にあるような、英国という土地に根付いた、
独特の「冬祭り」といった空気感は、今も健在と思います。



その、英国のクリスマス休暇の様子を、簡単に紹介してみようかしら。



ええと、休暇の始まりは、24日午後。まさに、今日の午後ですね。
大抵、どの会社も仕事は15時位までで、夕刻から、ロンドンなどの
大都市は、地獄のような帰省ラッシュになります。


車の渋滞は勿論、電車もバスも、ものすごい混みよう。一か月前には
殆ど座席が売れてしまうとか。ただ、その混雑さえ、人々は
「ああ、クリスマスだな」と、どこか楽しんでいる感があります。


で、無事目的地に辿り着いたところで「祭り」の始まり。近況報告話に
花を咲かせながら、前祝いのご馳走を食べるのですね。食事の前には、
シェリー酒、木の実、ミンス・パイなども振舞われたりします。
……勿論、食べてばかりではなく(笑)、きちんと教会に行く人々も。



明けて翌日、25日Christmas Dayは、朗らかに、食べまくる日(笑)。
伝統的に、クリスマス・ディナーと呼ばれる料理を食べるようですが、
いわゆる「ロースト肉」で、鳥(ガチョウやチキン)丸ごと一羽が
今も正当派と思います。「ディナー」と呼ばれますが、午後の食卓の事で、
大抵、13時か14時頃から食べ始めるようです。そういえば、
英国では、通常でも昼に食べる食事を「ディナー」と呼ぶのですよね。


前菜に、その家の主婦苦心の珍しい料理などが出て、続いてメインの
ロースト肉が、ジャガイモ、パースニップ、人参、豆などの定番野菜
と共に出てきます。意外かもしれませんが、大抵とても美味しい。
それからチーズとクラッカーなどが振舞われたりして、次なる主役の
クリスマス・プディングが、火に包まれて登場、となります。
そして、珈琲・紅茶になる感じかしら。


食べ終わるのは夕方で、それからは歓談しつつ、それまでツリーの下に
置かれてあったpresents贈り物の開封式(?)が行われたりするようです。
ちなみに、その時まで贈り物は開けてはいけないのだとか。


夜は、お腹いっぱいと言いつつも「Cold meat冷肉=ローストの残り」で
サンドイッチを作ったりして食べるのですね。
……勿論、食べてばかりではなく、きちんと教会に行く人々も(笑)。



で、休暇の最終日、Boxing Dayと呼ばれる26日。散歩に出かけたり、帰る
支度をしたりと様々ですが、祭りの終わりの気だるい感じがある日です。


ちなみに、「Boxing Day」ですが、一説によると、
昔、教会が、貧しい人の為に「箱」を設置していたのだとか。
で、余裕のある人々は、施しや、クリスマスの祝いで残ったものを
入れていくのですが、その箱を26日に開いて、恵まれない人々に
分け与えていた、のだそう。Box-opening dayという訳ですね。



と、以上が英国のクリスマス休暇の一般的な過ごし方と思います。


27日には仕事が始まり、既に新年を迎えたような雰囲気になって、
英国の一年は、どうもクリスマス前と後で分けられている気がします。



で、ですね。英国で、この「休暇そのもの」以上に美しいと感じるのが、
実は、クリスマスに向かっていく前1、2カ月の街全体の雰囲気です。
もしくは、クリスマスという行事を愛しむ国民性、でしょうか。


クリスマスというのは、良くも悪くもとにかく大事(おおごと)で、
人々は多かれ少なかれ、その行事の準備を怠らないのですね。
ミンス・ミートと呼ばれる、乾燥果物や木の実を熟成させたものを、
1年前から仕込み始める人もいると聞きます


夏を過ぎたあたりから、人々は、親戚・知人の、誰にどんな贈り物を買うか
頭を悩ませ始めるそう。主婦は、11月にはクリスマス・ディナーの献立を決め、
いかに当日手際よく美味しく作るか、計画を練り始めるとか始めないとか……。


12 月に入ると、教会でCarol Service 聖歌コンサートが行われたり、
ちょっとした集まりに、モルド・ワイン(温かい甘いワイン)が、
さり気なく振舞われたり。ラジオから、クリスマス・キャロル
流れ始め、コンサートがあちこちで開かれます。Pantomime と
呼ばれるクリスマス定番の子供向け喜劇芝居が始まり、
劇場に足を運ぶ家族も多くなります。


街全体が、クリスマス、という雰囲気に包まれていくのですね。



日が落ち、暗く凍えるような街角から、ほんのり明るい室内に飛び込み、
暖炉の横で、温かい飲み物を口にする時のほっとする感じ……。
それが、クリスマスの飾りや雰囲気と結びついています。


キリストの生誕という宗教的意味のある祝い事ですが、それ以上に、
冬至前後の、厳しい寒さ、長い夜を楽しく過ごす為の、
先人の知恵と工夫の結晶なのではないかしら。


また、日々の生活が厳しくても、年に一度くらいは全てを忘れ、
皆、陽気に過ごしましょうよという、楽観的な、「けじめ」の
行事でもあって、諍いごとを水に流して互いの健康を祈り合い、
近しい人々に素直に感謝して、心を一旦きちんとリセットさせる、
という現実的な目的があるようにも感じます。
……少なくとも理念では(笑)。だから、互いに
‘MERRY=陽気な’ Christmas を願うのではないかしら。


北欧のクリスマスも、自然信仰の冬至祭とキリスト教祭事の
融合と言われますが、英国でも同様に、人々の生活に結びついた
「冬祭り」なのですよね。



……「冬祭り」といえば、日本の「冬祭り」は廃れているように感じ、
帰国して以降、この時期になると少し悲しくなります。
私見ですが、日本の「冬祭り」は年末・お正月と思うのですね。


師走に入ったら、今年を締めくくる為の支度が始まり、大みそかに向けて、
街全体が歳の瀬の「そういう」雰囲気になっていく……そんな様子は、
少なくとも首都近郊では、もう感じることが出来ません。


今は、24日が過ぎるまでは、何となくクリスマスがメイン。
25日から、大慌てで日本の「年末」準備にかかる、という印象があります。


が、残念ながら、日本の「クリスマス」は、単なる娯楽イベントの粋を
出ていないと感じるのですね。この娯楽イベントが歳の瀬一週間前まで
幅をきかせていますから、この国本来の「冬祭り」は蔑ろにされて、
ほんの数日しか「年末の独特の雰囲気」を味わう事ができないと感じます。


年末年始の準備も、心の準備も出来ないうちに、バタバタと年を越し、
けじめもリセットもないまま、取りあえず新年を迎える、という感じ。


ですので、個人的には、あまり日本での「クリスマス」に
良い印象を持っていません。勿論、クリスマスを楽しむのが悪い、
というのではなく、飽くまで大きな「歳の瀬の冬祭り」の
小さな一貫に留めておいて欲しい、と願ってしまうのですね。


西欧の素敵な「クリスマス」に憧れても、その上面だけを
安易にまねるのでは本末転倒。実は、それと同等、それ以上の
素敵な「冬至祭」が日本にもあるはずで、それを祝う方が、
本当は何倍も楽しく、意味があるのだと思います。



そう言えば、幼い頃には、まだ「年末年始」の空気感は残っていて、
些細なことが理由で、何だか特別な気持ちになったものでした。
……ええと、大みそかの夜11時半頃から、全テレビ局が一斉に
ゆく年くる年」を放送していた事や、元日に、店が閉まっていて
町が静まりかえっていた事などですね(笑)。


テレビの質の低下と、商売がけじめを失った事も、日本独特の
「冬祭り」を衰退させてしまった一因なのかもしれませんね……。



……と、いつの間にか、陽気な話題から逸れてしまいました(苦笑)。
そろそろ自重しまして、最後に、素朴に素敵な「クリスマス=冬至祭」の
雰囲気が伝わるのではないかしら、と感じる映像と曲を、二つ
紹介しまして、今回もめでたく書き逃げをいたします(笑)。



http://www.youtube.com/watch?v=RCo3pH-6ZT0&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=ubeVUnGQOIk&feature=related



Warmest thoughts and best wishes for a wonderful holiday
and a Happay New Year!


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