「Childish」と「Childlike」

どこか落ち着かない気分のままですが、時間はどんどん流れ、
ふと落ち着いて辺りを見回そうとすると、なぜかさらに落ち着かなくなる、
という感じの今日この頃。……2012年は、どこか奇妙な始まりです。


しかも、それが個人的な気分なのか周囲の空気に影響されているのか、
今一つ量りかねているのですね。もしくは双方のごちゃまぜなのかしら。



と、訳の解らない書きだしですが(笑)、皆さんはいかがお過ごしですか?
どこか落ち着かない気分になったりしていませんか?



個人的には、近頃、落ち着かないついでに、社会全体が子供っぽいことが
気になって仕方がありません。勿論、これは今に始まったことではなくて、
帰国して以降、「幼さ」がこの国の価値の中心にあると感じていますが、
最近、それのいやらしさが増した気がしてならないのですよね……。


相変わらずうまく言葉になりませんが、震災後、少し鎮まっていた
子供っぽい価値観が、またぶり返しているという印象。もしくは、
「子供っぽい価値観」の中でしか、居場所を得ることができない人々が、
自らの地位を守ろうとして躍起になっているようにも感じます。


いずれにしても、どこか何か偽善的で、作為的で、故に
上面の幼さに、いやらしさを感じてしまうのかもしれません。



英語に「Childlike」と「Childish」という言葉がありますが、一般的に
前者は良い意味での子供らしさ、後者は幼稚さを表します。


個人的には、元々日本人には「Childlike」の資質――子供のような
正直さや天真爛漫さがある、と思っています。良くも悪くも
それが日本人という人々の特徴の一つなのではないかしら。


が、今蔓延しているのは、「Childishness」のほうなのですね。これは、
未熟や我が儘といった「子供じみた」性質で、無垢ではなく無知。
こと、様々なものごとの「流行」と、それに伴う経済の在り方が、
この「Childish」=未熟・幼稚な価値観と直結しているように
感じられてなりません。そして、本来美徳であるはずの本当の
「Childlike Quality」を「Childish」として嘲る、
子供じみた風潮もあるのではないかしらね。



もっとも分かりやすいのが、メディアと直結する分野で、悲しいかな
この稚拙な価値観に侵されつくしている気がします。中でも
「TV」や「新聞」を引っ張る人々の幼稚化が顕著なのではないかしら。


そして、今でも残念ながら双方の影響は大きいのですよね。
故に直に影響を受けて、社会全体の価値観もやはり幼稚、と。
……って、少し短絡的かしら(苦笑)。


が、横行する各種娯楽情報や、軽く薄いフィクション群は、
ひたすら、子供っぽい、自立心に欠ける価値観をまき散らしているように
個人的には、思えてなりません。ものごとを見る視野が極端に狭く、
キーワードは「安さ」と「自分」。最近は「感動」と「元気」と「勇気」。
……って、少し辛辣かしら(苦笑)。
勿論、そうでないものも多くあるのだけれど、全体として、ね……。



子供のような純粋さや熱意(Childlike Quality)というものは、
それだけで存在意義があると思いますし、それが時代の流行や
独自の文化を生むことも多々あるのだと思います。が、その場合、
「姿勢」や「行動」が、子供のように正直で単純というところが
重要なのであって、感性や価値観そのものが幼稚になっては
いけないはずなのですね。ですが、今のメディアは、
「姿勢」や「行動」は歪んでいて、感性や価値観が子供っぽいのだと感じます。


そういう存在が力を持ってしまっているのだから、これでは、
例えば、政治がまともになっていくなんて夢のまた夢……。



……何だか、珍しく悲観的になってきましたが(笑)、ともかく
まっとうな価値観が主流になってほしいとつい願ってしまいます。



で、その「まっとうな価値観」の基礎となるものですが
個人的には、正統な「言葉」と思っています。


震災後、「芸術や文学」の無意味さや無力を語ったり、受け取り手に
「元気を与える」ことが文学や芸術(演劇を含む)の意義と述べたりする
類の記事を目にしましたが、どうしてどうして言葉を使った芸術は
本来、「価値観」の形成に影響を与える、とても大切なものと思うのです。
自負ではなく責任として、最低限この認識を持つことが、
こういう分野に携わる人々に求められるのではないかしらね……。
勿論、自戒を込めて、です。



今までにも何度か書きましたが、英国の社会が、地に足のついた
価値観を今まで何とか保ってきているのは、大げさなようだけれど、
Shakespeareの存在に負う所が大きいのだと思います。
Shakespeareの絶対的な「言葉」たちが、最終砦となって英国人の
価値観を支えている、と感じます。ちなみにShakespeare
よく古典と言われますが、近代語の祖で、故に現在も
「比較的身近に存在する正統派の言葉たち」です。


いったい日本の価値観の核となるような「言葉」は何なのでしょうね。
和歌のような気もするけれど、現代とかけ離れすぎかしら。


何にせよ、日本では、時代時代の価値を体現するものは
演劇ではなく「歌」のように感じます。


ものすごい批判を受けそうですが、個人的には、早く
世界に一つだけの花」呪縛から抜け出して欲しいと願いつつ
まっとうな価値観がまっとうに表現された、美しい日本語の
力強い歌の登場を、地味に待ち続けるこの頃です。



……今回は、なぜか少々攻撃的な気分で、まさに頭に浮かぶままを
書きなぐりです(苦笑)。ぜひさらりと読み流して下さいね。



Players