Quotes à la carte 引用アラカルト

なんだか忙しくしていて、前回更新から随分時間が経っていました。


感覚的には、残暑が厳しいと感じていた頃から、まだ一週間くらい
しか経っていないのですが、気づけば周囲はすっかり秋。
……おかしいですね(笑)。すっかり肌寒くなりましたが、
皆さんはいかがお過ごしですか?



さて、突然ですが、こんな格言(?)を聞いた事がありますでしょうか:



   A specialist knows more and more about less and less
   until eventually he knows everything about nothing.
   A generalist knows less and less about more and more
   until eventually he knows nothing about everything.


   (ざっくりとした意訳: 専門家‐狭く深く物事を知る人‐は、
   どんどん分野を狭め、詳細な知識を得続けて、結局、
   取るに足らない何かの全てを知っているだけになる。
   万能家‐広く浅く色々なことを知っている人‐は、
   より浅い知識をどんどん広げ続けて、結局、全てにおいて
   何も知らないに等しくなる。)
   


ある米国の医者と、ある豪州の動物学者の言葉らしいのですが、
英語圏で、たまに引用されているのを見かけます。


どういう訳か、近頃、この言葉がやけに頭に浮かびますので、
今回、これを題材にして書いてしまおうと思います(笑)。



では、早速。……ええと、ある英国人コメディアンがですね、
上記の言葉を引用して、専門家について、こんなふうにも言っています:



  ...nowadays, they are all specialists. Everyone's becoming
  better and better at less and less. Eventually someone's
  going to be superb at nothing!
  
  (ざっくりとした意訳:…最近はね、皆が皆、専門家なのよ。
  誰もがますます小さなことに、どんどん熟練していって、最終的には、
  きっと誰かが、下らないことに、恐ろしいほど素晴らしくなんのよ!)



これは、最近の(といっても数十年前の話ですが)医療技術について
述べたものらしいのですが、一般的な意味で捉えても
妙に納得できて、思わず笑ってしまいます。



現在の日本でも、分野によっては、こういう所がありますね。
学術界(こと文系)ですとか、経済界ですとか、ね。


ええと、日常的な例で言うと、詳細にこだわり過ぎて、
使い勝手の悪くなった調理器具とか、食品の入れ物あたりかしら(笑)。
その細部の一点は確かに見事だけれど、全体としてどうよ、という感じの。
物によっては、食品もそうですね。


「〜がもっと美味しくなりました!」とか「〜がさらに使いやすく!」
と謳われた、全体的には何が変わったのか分からない食べ物や、
何だか別方向に使い難くなった何かを、溜息をつきながら、
食べたり使ったりしていますもの(笑)。



で、個人的にはですね、発展の目的が、快楽や嗜好を満たすこと
になった瞬間、意味ある発展は終わるのではないかしら、と
思っています。何であっても、必要性から生み出された最初の形が、
最も優れていて、その後、ある一定まで洗練されてしまえば、
それ以上のものは出来ない、気がするのですね。


それ以降の「発展」は、所詮、表層の好みの問題で、例えば、
今の日本の「商品開発」は、多くが、「どんどん視点を狭めて、
細部をいじり回すことに躍起になって、結局、取るに足らない何かを
開発することに全精力をつぎ込んでいる」のと紙一重になっているような。


勿論、意味ある変化や発展を続けるものも、たくさんあるのですけれど、
'Specialists'には、全体を見る目や、根本の必要性を見分ける目が、
必要不可欠なのだなあ、と何だかしみじみ思っています。



さて、一方の'Generalists'ですが、現在の日本社会は、総じて
万能家(というよりは「何でも屋」かしら)の天下のような気がします。
誰もが、様々な分野で、様々な物事に浅く広く手を出していて、
結局、誰が何をしている何なのかまったく分からなくなっている、と。


上のコメディアンの言葉をもじって表現すると、こんな感じかしら:



  Everyone’s becoming worse and worse at more and more
  Eventually everyone’s going to be awful at everything!


  (ざっくりとした意訳: 誰もが、色々な事に益々不出来になっていって、
  最終的には、誰もが、全ての事に、びっくりするほど酷くなんのよ!)



勿論、素晴らしいオールラウンダーも、たくさんいるのですけれど、
どうも小手先の器用さで、その場その場をこなす、薄っぺらい人々が
過大評価される価値観はね、ちょっとどうなのかしら?
もう少し物事の専門性をね、重んじてもいいのではないかしら、
と、渋茶をすすりながら、しみじみ考えるこの頃です(笑)。



……ええと、結論としてはですね(何の?とは聞かないで下さい)、
どうも近頃、色々極端で危険、ということでいかがかしら。
過ぎたるは猶及ばざるがごとし。やはりバランスが大事。
専門家でありつつ、広い視野を持っている、とか
万能家でありつつ、核となる視点をしっかり持っている、とか、
そういうことを、忘れずにいたいですね……。



と、一応上手く(?)まとまったところでですね、引用ついでに、
近頃、益々元気に有害に腹立たしい内閣与党及び首相について、
引用でコメントしてみようと思います(笑)。


では早速。これは、東欧出身のある作家の言葉だそう:



  No one is so stubborn and dangerous as the beneficiaries
  of a fallen idea - they defend not the idea, but their
  bare life and the loot. 


  (ざっくりとした意訳:崩壊した思想の恩恵を受けていたものほど、
  頑固で危険なものはない―彼らは、思想ではなく、自らの命と
  戦利品とを守ろうとするのだ。)



今の与党はですね、権力に付随する恩恵が欲しかっただけで、今更
崩壊できるような素敵な主義主張があったとは、ちっとも思いませんが、
彼らにとって、fallen idea(=表面上主張していた政治信念や国政)など、
きっとどうでもいいのですね。ただひたすら、bare life(=政治生命)と、
the loot(=強奪した権力)を手放したくないだけで、故に、誰よりも、
stubborn and dangerous、頑固で危険と。……やっかいですね。


そういえば、シェイクスピアの芝居の一つ、「Richard the Third
リチャード三世」で、主人公グロスター公が、権力を得る為に、
もう肉親から友人から家臣から国民から、片っぱしに騙してサクサク
裏切り続けますが、最後には、自らが裏切った人々に力一杯呪われて、
もう、たいへん惨めな最期を遂げます。現内閣はどうなるかしらね。
……と、ごくやわらかく批判しておきます(笑)



ついでにもう一つ。今、大活躍の与党政治家の面々に代表される、
この国で「団塊の世代」と呼ばれる年代の方々の多くは、失礼だけど、
「若さ崇拝」や自らの「永遠の若者」ぶりに奇妙な誇りを抱いていて、
しかも、「若さ」の持つ意義を取り違えてはいないかしら。愚直さと
世間知らずの勢いと、そこから生まれる単純で理想主義的な思想は
若さの特権だけれど、それが万能の価値とは限らないのですよね。
人は、時と共に成熟しなければ。



で、早速、George Bernard Shawのこんな言葉を引用します:


  Any man who is not a communist at the age of twenty is
  a fool. Any man who is still a communist at the age of
  thirty is an even bigger fool.
  (ざっくりとした意訳: 二十歳の時に平等主義者でない人間は
  馬鹿者だ。30歳を過ぎても、まだセンチメンタルな平等主義者で
  あり続ける人間は、大馬鹿者だ。)
  


若い時(20歳)には、壮大で叶わぬ理想を追い求めるという愚行を
経験しておくべきだけれど、30歳までには、理想では動かない
世の仕組みにちゃんと気づいておけよ、というところかしら。
素晴らしいのは、若さを武器に得る経験であって、若さが生み出した
暴力的な理想主義思想そのもの、ではない、と思うのですよね。


60を過ぎてもその、若さの特権の概念から逃れられない人々って、
何なのかしら……妖怪童?(苦笑)もしくは、案外単純に、
権力の亡者、なのかしらね。と、やわらかく批判しておきます(笑)。



気づけば、何様のつもり?という内容ですが、いいのです。
何だか、震災から一年半以上が経っても政治がこの体たらくで、
呆れるを通り越して、笑ってしまうのですもの。


次回、時間を見つけた時は、もっと楽しいことを書こう、と
誓いつつ、今回は、このまま書き逃げいたします(笑)。



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